当初出た当時は、そこまでファンの関心を集めるとは思われていなかった、マイクロシェア。その「マイクロ」が示すとおり、一口あたりの所有%が、0.002%というケースもある、いわゆる、日本で地位を得た一口馬主の、さらに細かいものです。
 一口当たりの金額が著しく低く、かつその中に推測される金額での預託料も込みのため、参入障壁が低いこと、また、一口馬主の考え方とは違い、本当に本物のシェアを得ることができるため、特に熱心なファンからは大きく支持されています。

 

今はMyracehorse.comが1強。

 現在、アメリカの競馬界で最も認知があるのは、Myracehorse.com。私も出資しましたが、ケンタッキーダービー馬・オーセンティック、チャンピオンメア・モノモイガール、その他、募集後にG1優勝したゴーイングトゥベガス等、設立して間もないにも関わらず、多くのG1馬を所有するに至っています。
最近は、イギリスやオーストラリアにも、その根を伸ばしつつあるようです。

 全てを調べ上げていないので、補完は他の方におまかせしますが、彼らの戦略としては、以下が挙げられると思います。

  • 既にG1を含む重賞優勝馬の50%のシェアを獲得、マイクロシェアにつなぐ
  • パートナーのスペンドスリフトファームとともに、1歳・2歳トレーニングセールで購入する
  • リチャード・マンデラ、トッド・プレッチャー等、東西の有力調教師に預託
  • 種牡馬入り後も共有継続可能、種付け料の配当も来る(らしい)

預託先が有力調教師、というのも、魅力的ではありますが、何よりも、マリブムーン、イントゥミスチフ&ビホルダー兄姉等、数多くの名馬を輩出してきた名門、スペンドスリフトファームとの協働で馬を選定して購入し、それらを所有するというところに、大きなアドバンテージがあると思います。

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実際に、そのパートナーシップによってケンタッキーダービー馬も輩出しましたし、そのオーセンティックは、後にブリーダーズカップ・クラシックも勝ち、年度代表馬の座も手中に収めました。その意味において、彼らのプロジェクトは成功を収めていると言って、過言ではないと思います。

そして、そんな彼らに対して皆さんが関心を寄せる、もうひとつのファクターは、「果たして儲かるのか?」ではないでしょうか。

ケンタッキーダービー・BCクラシック優勝馬を所有した結果

ダラダラ書くのは性分ではないので、先に結論を言います。

「儲かりません」

善戦マンの方がいいかもしれない

先日、あるYouTubeに招かれて話したのですが、本当の本当に儲かりません。たぶん、オーセンティックのようなG1馬を所有するよりも、ずっと条件戦やブラックタイプレース等で善戦する馬、を所有したほうが、金銭的には儲かると思います。

なぜならそこには理由があるのです。

出資は、条件をしっかり呑み込んでから

まず、私はオーセンティックとモノモイガール、この2頭の出資をしました。それぞれ、既に結果が出ている馬なので、そういう馬は一口の金額も高いのですが、楽しめるかなと思い、単純に決めました。

これが、一口あたりの配当になります。
馬体の12.5%をMyracehorse.comが所有。それを0.002%で売っていたわけですが、ハスケルインビテーショナルは4ドル少々の配当(この時点でこの金額は私の懐には入ってきていません)。

皆さん驚かれると思いますが、ケンタッキーダービー優勝、プリークネスステークス2着、BCクラシック優勝、これらに対する、我々出資者への配当金はゼロです。
そして、トータルでは、直接的には出資額は微塵も回収できていません。ではなぜ、こんなことが起こるんでしょうか。

問題はKickerの存在

答えは、Kickerです。日本の皆さんにはあまり馴染みがないかもしれませんが、馬の価値は、レースを勝つごとに上がっていきます。あまり細かくは踏み込みませんが、価値の高いレースを勝てば勝つほど、その馬の評価額は上がっていくのです。
その最終評価額が、種牡馬入りするときのシンジケートの金額に、大きく影響を及ぼすわけですが、この場合、スペンドスリフトファームがオーセンティックの所有権を購入した段階で、既にKickerが設定されていたようです。

そのため、格式も賞金も最高峰に位置する、ケンタッキーダービー・BCクラシックを勝ったオーセンティックは、その評価額も圧倒的に跳ね上がった、という計算がなされているわけです。

そこで起こるのは、Kickerによって発生した評価額の差損益をどうするか問題。
個人的には、ここが納得行かないところなのですが、株と同じで、評価が上がるならば、そこに対する差益は、シェアホルダーのものだと思うので、この時点で所有権を売却したら、配当されるべきでは?と、投資素人としては思うのですが、どうやらそうではなく、そのKickerによって上昇した価値の分を、所有者が補填しなければならない、という考え方のようなのです。

上記にあるように、Kickerとしては、信じられないレベルの金額が積み上がりましたが、それを補填するのに、それぞれ、マイクロシェアホルダーが支払わねばならないのだそう。ただ、追加で徴収ではなく、今まで得た賞金と相殺する形を取るため、追加の負担はないのですが、いまいち納得は行かないところです。

得られたベネフィットは写真のみ

結局、直接的な利益として得ることが出来たのは、ケンタッキーダービー優勝時に、Myracehorse.comから送られてきた、口取り写真のみです。無論、コロナ禍の真っ只中でしたから、口取りの中に私はいませんが、とりあえず名前入りで写真を送ってきました。

これはサンプル。実際には私の名前が、Ownersと書いてあるところに入っています。

もちろん、これからもオーセンティックの第二のキャリアは、種牡馬として続いていくわけで、そちらのほうが利益としては大きいわけですが、これもスペンドスリフトファームとMyracehorse.comの間での契約内容に依存しますし、胴元が大方の利益を吸収する構造である以上、おそらく種付け料の配当は望めないと思っています。またKickerの支払いが全部済んでいないとか、いろいろ理由がついて、ゼロ配当なんだろうなぁと、諦観しています。

モノモイガールも、引退後に明細が届きましたが、Administration Feeで4,800ドル、Race Management Feeという、理解に苦しむFeeが17,850ドル、合計22,000ドル強の利益がクラブに差し引かれ、一口あたり46ドルで購入も、配当は12.87ドルでした。

確かに、それぞれの馬の所有権を持つことが出来ますが、持っている感はあまりなく、ベネフィットも特になければレースに簡単に観戦にも行けないですし、賞金配当もあまりに取られる金額が大きく、なんとも言えない感覚をいだいてしまったので、今後私はマイクロシェアに出資することはないと思います。

採算を優先する人は、出資をしないほうがいい

私個人的な考えとしては、Myracehorse.comに出資したい方は、採算を度外視する方のみに限ったほうがいいと思います。
しかも、今年の2歳馬の募集もみましたが、セリの購買価格の3倍で募集中・・・
なので、よほど走らないと採算は取れません。しかし、Kickerがある以上、あまり走られると評価額が上がり、レースに勝っても配当が出なくなる可能性もあるので、やはり採算は取りにくくなると思います。

したがって、Myracehorse.comを含むマイクロシェアに出資されたい方は、あくまで娯楽、所有権を持つことで満足を得る、などなど、別の理由がある方に限ったほうがよいと思います。

個人的には今後手は出さない

私は、試験的に2頭に投資してみてよかったと思います。なぜなら、私は今後マイクロシェアには手を出さないという、結論を得ることが出来たので。もちろん、オーセンティックのケースにおいては、なかなか興味深い体験をさせてもらったので、その意味でもよかったと思っています。

それぞれ、出資される方々の思惑によって、これらマイクロシェアは活用されるべきと思いますし、それによって競馬界が少しでも刺激されていくならば、否定されるべきものではありません。
ただ、後から「儲からないじゃないか」とはならないように、それぞれに大人の判断をくだしていくべきだろうと思いました。