アメリカはサラブレッドの生産頭数から始まり、血統や生産地も非常に裾野が広いのです。日本では、北海道、青森、九州産が主かと思いますが、ケンタッキー、メリーランド、フロリダ、ニューヨーク、オクラホマ、カリフォルニア等々、生産地も非常に幅広い州に分散しています。ケンタッキーやフロリダ・ニューヨークが主要生産地となりますが、それぞれの州に繁殖牝馬がいて、種牡馬多く存在するのです。
アメリカの主要セリ会社は、ファシグ・ティプトン、キーンランド、オカラブリーダーズセールス(OBS)。以前は西海岸にバレッツ社も存在しましたが、諸々の事情により解散。現在は、3社によるセールが主要となっています。
セリの種類も様々で、繁殖牝馬セール(当歳とのミックスセール)、1歳、2歳トレーニングセール、はたまた現役馬セールや、最近はキーンランドがデジタルセール(オンラインでの入札のみ)を開催するなど、多くの種類が存在します(英・仏も同様、英タタソールズ、仏アルカナ)。
購入される方のご意思によって違いますが、セリで愛馬を見つける方法は、いくつか存在します。それらを順に見ていきたいと思います。
日本で競馬するために購入したい
日本競馬に持ち込むためには、絶対的な条件が存在します。それは、
「海外競馬で未出走であること」
つまり、海外で出走している既走馬は、日本国へ輸入は可能も、日本競馬での出走は出来ないルールになっているのです。これは日本独自のルールで、米・英・仏・独・香等、その他パート1国には存在しないものです。これを前提で話を進めますね。
1歳セールでの購入は最も一般的な方法で、肌感覚的には、日本へ輸入されている馬の6〜7割近くを占めるのではと思います。1歳セールは、7月から始まり、ニューヨーク産セール、サラトガセール等が挙げられますが、最も大規模に行われるのは、キーンランド・セプテンバーセール。セリカタログ6冊、約2週間のスケジュールで構成され、毎年4000頭ほど上場します。米国における活躍馬の多くは、キーンランドで取引経験(主取り含む)のある馬です。それぞれ狙いが違うのですが、多くの日本人バイヤーはBook 1〜3あたりで購買される方が多いです。
2歳トレーニングセールも、リスクを抑えて駿馬を購入するには、良い方法です。トレーニングセールの名の如く、追い切りを見て購入の参考とする事ができるからです。しかも、日本のように「騎乗供覧」ではなく、1〜2ハロンをビッシリ追い切るので、その時点における馬の完成度・スピードを、目の当たりにすることが出来ます。開催時期は、2歳3月から。3月第1週に開催される、ファシグティプトン・ガルフストリームセールを皮切りに、OBS3月・4月・6月等、数多く開催されます。
ご想像の通り、3月のセールはいわゆるブティックセールと考えて差し支えなく、良質な馬が出てくる反面、馬体金額も非常に高く推移するケースも多く見られます。私の経験上、2歳トレーニングであれば、OBS4月が、頭数も多く、金額も比較的落ち着く傾向にあるため、購買者の方々には4月をお勧めしております。
米国・海外競馬用に購入したい
日本競馬のような絶対条件が存在しないため、かなりフレキシブルに購入が可能です。
オールエイジ(All Age)、レーシングエイジセール(Racing Age)等が一般的ですが、ミックスセールでは、牝馬が競走用・繁殖用の、両方の目的で上場されますので、いうなれば、それらを目的としてセリに出ている馬は、どの馬でも競馬に供する事が可能です。
購入するポイントは?
「競走馬は血統が大事」である、ということは、おそらく誰もが一度は耳にしたことがあると思います。実際に、現在のサラブレッドの世界を支えているのは、過去、約300年の間、紡がれてきた血筋。その中で、血統の良い名馬が後継を生産できたケースもあれば、期待されなかった父・母が、最強馬を産み、大きく血統の枝葉を張り巡らせているケースもあります。その中で最も大事なことは、「その馬自体が良い馬であること」であると考えています。
フィギュアスケートで、全世界で活躍する金メダリストの羽生結弦選手。ご両親はそれぞれがトップアスリートであったわけではなく、お父様は教員、お母様は専業主婦で、羽生選手の活動を支えていらっしゃるようです。
血統でいえば、羽生選手はけっしてカタログ上で見栄えのする血統ではありませんが、誕生し、練習しながら成長した結果、過去の日本人にはない手足の長さ、そして4回転を成立させる高いジャンプ力を得るに至っているわけです。
もちろん血統によって、各国の競馬への適性や才能が、ある程度見える部分もありますが、血統が良くとも走らない&悪くても走るのが競走馬。金額と馬体、バランスの取れた納得の行く買い物をすることが、いちばん大切だと思います。
ちなみに、日本のセレクトセールで取引された1億円以上の高額馬のうち、G1を勝った馬は5%程度です。
少しでも、勝つ確率を上げ、購買者様に喜んで頂く、そのお手伝いをさせていただいております。