毎年、競馬関係者とファンをワクワクさせるのは、毎年デビューする新種牡馬の産駒。とりわけ、裾野の広いアメリカ競馬界。毎年27,000頭前後生産される中で、選りすぐられた馬たちが、常に高いレベルで業界を賑わせています。

今年産駒がデビューするフレッシュマンサイアーの中でも、私論たっぷりに、私が注目する新種牡馬たちを紹介していきたいと思います。

アクセラレート

(父:ルッキンアットラッキー 母:イシューズ 母父:オーサムアゲイン)

 父・ルッキンアットラッキーは、大種牡馬・ミスタープロスペクターの流れを汲む、スマートストライク産駒。2歳からG1を3勝。3歳時はプリークネスSを優勝するなど、早くから活躍した競走馬でした。アクセラレートの他、ケンタッキーダービー優勝のカントリーハウス等を輩出。主に、シャトルで訪れているチリでは、数多くのG1ウィナーを送り出しています。

 そんな早熟な父から生まれたアクセラレートは、事情あってか2歳はスキップ。3歳から競走生活を開始。ポツポツと重賞制覇&2着を遂げ、充実の5歳へ。

 名だたる米西海岸競馬の王道、サンタアニタH、ゴールドカップ、パシフィッククラシック、オーサムアゲインSなどを優勝。全てのダート中距離G1を総なめ。シメは、ブリーダーズカップ・クラシック。2018年はチャーチルダウンズ競馬場で開催されましたが、ガンナヴェラ、サンダースノー、ヨシダ、メンデルスゾーン、その他諸々の強豪たちを退けて優勝。惜しくも、3冠馬・ジャスティファイの誕生により、年度代表馬の座は明け渡しましたが、最優秀ダート古牡馬の栄冠を獲得しました。

現役時代は、18002000mという中距離での活躍でしたが、同距離のケンタッキーダービーを7勝もしている調教師、ボブ・バファート曰く「ダービーを勝つのはスピードだ」と述べるほど、米国ダートはスピードが命。うまく伝われば、幅広い距離で産駒の活躍が見られるのでは、と期待しています。

オールウェイズドリーミング

(父:ボーディマイスター 母:アバーブパーフェクション 母父:インエクセス)

 私の主宰する、外国産馬専門の共有馬主クラブ・トラヴァーズサラブレッドの2期生として、今年募集している産駒の父もこの馬なのですが、日本でも馴染みのあるエンパイアメーカーの流れを汲む、ケンタッキーダービー馬。トライアルとなる、フロリダダービーで見せた瞬発力は、そのまま本番でも発揮され、名伯楽トッド・プレッチャーに、初のダービートレーナーの勲章をもたらしました。

 父・ボーディマイスターは、ケンタッキーダービー前哨戦のアーカンソーダービーを優勝。本番のクラシックは、後に日本に輸入された2冠馬・アイルハヴアナザーに阻まれ、栄誉を逃しましたが、ケンタッキーダービー・プリークネスSと、双方で2着。

 トラヴァーズステークスを目指して調整中に、左肩に異常を発生し引退。種牡馬として、上記オールウェイズドリーミングを輩出した後、トルコに輸出され、現在は種付け料12,500ユーロでオファーされています。

 そして、フロリダダービー開催地のガルフストリームパーク競馬場という、砂の含有率の高いダートでも実績を出した父の、適性と瞬発力。日本競馬にマッチするかが気になっていますが、Good sampleとして、トラヴァーズサラブレッドの産駒にも、是非ご注目頂きたいと思います。

イメージ画像
トラヴァーズサラブレッド募集のオールウェイズドリーミング産駒

グッドマジック

(父:カーリン 母:グリンダザグッド 母父:ハードスパン)

 私個人的に、もっとも期待している新種牡馬のうちの1頭です。

 父は、偉大な競走馬・カーリン。プリークネスS、ジョッキークラブゴールドC、ブリーダーズカップ・クラシック、ドバイワールドカップ等、G17勝。種牡馬としても、パレスマリス、キーンアイス等の牡馬、また去年のBCディスタフでマルシュロレーヌとも争った、マラサート等、多くのG1馬を輩出しています。

 グッドマジックは、2歳時はBCジュベナイルを優勝。日本では信じられないことですが、未勝利の状態でG1に出走し、後に活躍するボルトドーロ、重賞9勝を挙げてアロースタッドに導入されたフィレンツェファイア等、名だたる馬たちを下しての1着入線でしたので、なかなかに価値ある1勝だったと思います。

 残念なことに、同世代に3冠馬・ジャスティファイがいたことで、ケンタッキーダービーの栄冠を逃しましたが、その後G1・ハスケルインビテーショナルを、3馬身差で優勝。才能を見せつける形となりました。

 種牡馬としても、上場の滑り出し、と言っていいのではと思うレベル。キーンランドでは、出来の良い産駒が多く取引。私もチャレンジしましたが、競合多く買えませんでした・・・汗 

 ちなみに弟のベストマジックは2歳時に日本に輸入されましたが、惜しくも喉の疾患などで大成できていませんが、馬っぷりの良さは、セリ会場の空気が変わるほど。現場にいた私も、思わず息を呑みました。

 血統的にも父・カーリン、母父・ハードスパン。うまく伝われば、日本競馬でもグッドマジック産駒の活躍が見られるかもしれません。

こんなGood Magic牝馬も見てました。

Good Magic Filly

メンデルスゾーン

(父:スキャットダディ 母:レスリーズレディ 母父:トリッキークリーク)

 言わずもがな、現チャンピオンサイアー・イントゥミスチーフや、G111勝&史上最強牝馬と呼び声も高い、ビホルダーの半弟という、超良血馬です。

 父・スキャットダディは、大変夭折が惜しまれるところですが、米国3冠馬・ジャスティファイ、欧州2歳チャンピオン・ノーネイネヴァー、日本でも活躍したミスターメロディ等、8世代しか残せなかった中でも、大変な数の活躍馬を輩出。未だに、その血を求めて、セリに向かう生産者も多く見られます。

 メンデルスゾーンは、2歳時は、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルターフを優勝。日本にも鮮烈な印象を残したのは、3歳春。UAEダービーへの遠征は大成功、2着以下に18馬身差をつけて圧勝したのは記憶に新しいところです。その後、UAEで得た権利を使用し、大きな期待を抱いてケンタッキーダービーへの出走を決定。毎年のように、レース前には大雨が降るのですが、この年も同様。重たい馬場と、スタート直後から外枠の馬にぶつけられる不利もあり、最後方20着での入線となってしまいました。

 偉大な兄姉を持つことにより、大きな期待を抱かれている本馬。祖父・ヨハネスブルグは、日本に輸入され、種牡馬として堅実に競走馬を送り出し、先日無事に種牡馬を引退。父がスキャットダディに代わり、どれだけ日本競馬にマッチするのかが注目されます。

メンデルスゾーン

 米国ダートへの適性は、UAEダービー優勝によって、ある一定レベルで証明されていると感じます。メンデルスゾーンの血が、全世界で活躍する日を願ってやみません。