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真夏のダービー・トラヴァーズステークス終了
A fantastic showing by all four #KyDerby grads in todays Travers Stakes! 👏🏼 pic.twitter.com/OZonCwfVwI
— Kentucky Derby (@KentuckyDerby) August 27, 2022
ケンタッキーダービーで大変強い競馬を見せながら2着、そしてプリークネスでも2着に敗退したエピセンター Epicenterが、大一番でそれらの勝ち馬2頭に対して雪辱を果たしました。ダービー馬・リッチストライク Rich Strikeは4着、プリークネス優勝のアーリーヴォーティング Early Votingは最下位に。
鞍上ジョエル・ロサリオ Joel Rosario、名伯楽スティーブ・アスムッセン Steven Asumussenともに、春の雪辱に対して溜飲を下げた形。秋に向けて、エピセンターが非常に楽しみになりました。
ただ、比較的コンスタントに使われてきている印象なので、ここで一息入れて、10月初頭のトライアルから始動・・・となる感じでしょう。いずれにしても、楽しみな秋です。
「以前に教えてくれたよね」
偶然の出会いから、聞きたかったことを聞く
私も日頃からお世話になっている、西海岸のトップトレーナー、ダグ・オニール Doug O’Neill。長く第一線にいる人とは思えないくらい、とても気さくで、人望も厚い、信頼の置ける調教師のひとりです。
第4回ジャパンカップダートでは、フリートストリートダンサーでアドマイヤドンを差し切って優勝。2022年8月現在、JCダート〜現チャンピオンズカップで唯一優勝したことのある、外国馬&調教師になります。
現在、彼はサンタアニタ&デルマー(季節ごとに移動)、サンルイレイトレーニングセンター、ケンタッキーと、3拠点に合計120頭管理しています。
先日、デルマー競馬場から30分くらいのところにある、サンルイレイトレーニングセンターに行ってきた際、たまたまダグも在厩馬の様子を見に来ていて、偶然の邂逅となり、いろいろなことを質問するいい機会になりました。
「随分前に、教えてくれたよね」
もう一度、いまの考え方を聞いてみたいと思っていた
いいチームを作れている厩舎の秘訣
以前、JRAの懇意の調教師に「失礼な言い方とは思うんですが、調教師の見極める目もすごいと思うんですが、出した指示をちゃんと遂行して馬を仕上げる助手さんたちがすごいと思うんですけど」と聞くと、即
「そうですよ。当たり前じゃないですか」
と回答が来たことをよく覚えています。
「スタッフあっての僕ですよ。調教師が偉そうなツラするのは間違ってるわ」
リーディングトレーナーがそう言うのですから、そうなのだと思います(笑)
以前、TCKの調教師さんを連れて、ダグの厩舎に研修させてもらったことがありました。そのときにも、厩舎の強さの秘訣を聞いていたのですが、時間も経ったので、再び聞いてみようと思いました。
私:ダグ、昔、トレーナーが勝つ秘訣は、いいチームを作ることにあると教えてくれたよね。で、良いライダーを雇うのは大変だとも教えてくれた。たぶん、その考え方は今も変わらないと思うんだけど、良いライダーをチームに引き入れるコツってあるの?
この質問に対して、ダグはアメリカ人がよくやる「指のジェスチャー」をして、一言。
ダグ:お金(笑)
私:(笑)
ダグ:凄くシンプルな話なんだけど、良いライダーは取り合いなんだよね。だから、Competitiveな給料を払えないと来てくれないんだ。
私:なるほどね。でも、それだけじゃないでしょ?
従業員への尊敬
ダグ:自分がすごく気を遣っているのは、従業員をリスペクトすることだね。彼らも子供じゃないし、経験値が高い人間が多いから、ライダーや厩務員のやり方に、余計な口は出さないようにしている。
私:確かに、いつダグの厩舎に行っても、ハッピーな空気がすごくあるよね。みんな楽しそうに仕事している。アシスタントトレーナーのレアンドロを筆頭に。
ダグ:そう、いい雰囲気で仕事ができないといい結果は出せないよね。ちなみに、あのXXXXXって調教師知ってるだろ?
私:いつも、クレーミングレースでもなんでも、競馬のときにいつも怒鳴っているあの人ね(笑)
ダグ:そうそう、彼は厩舎の中でもあの調子らしくて、腕の立つライダーでも、数ヶ月経つと、僕のところに「仕事がないか?」って言ってくるんだ。G1もいくつも勝っている彼だけど、やっぱり、従業員へのリスペクトってすごく大事。みんな力を出してくれるし、長く働いてくれる。
ここまでの話をうんうんと聞いていたら、横でダグのエクササイズライダーが、まだ向こう正面なのに「ビューン」と飛ばして行ってしまい、明らかなオーバーペース。「おいおい、あいつゴール勘違いしてないか?」と、苦笑いしながら、戻ってきた彼に対して「速すぎる」と苦言を呈することはありませんでした。
その代わり、アシスタントトレーナーに「あの馬ちゃんとケアしておいてね」と、別の指示を与えていたのが印象的でした。
良いライダーとは?
そのついでに、突っ込んで聞いてみたのは「良いライダー」の定義。これについても、ダグ自身の意見を教えてくれました。
私:ちなみに、いいエクササイズライダーって、ダグの中で定義があるの?
ダグ:うーん、良い質問だね。一番大事だと思うのは、馬本位で仕事してくれることかな。動かない馬を、無理やり動かすのではなく、馬と対話しながら馬のペースで調教を進めてくれて、ちゃんと正直に報告してくれる人。これが、自分本位だと、さっと流してオシマイで「まーよかったよ」としか言わない。こんな人についたら、伸びる馬も伸びないね。
私:となると、やはり人格的にも良い人間が、良いライダーになる素質があるということかな?
ダグ:そのとおりだね。お、引き上げてきたな。そろそろ戻るか。
ということで、質問タイムはいったんここで終了。
その後も、ダグの仕事を見させてもらいながら、考えさせてもらいました。
見たくない瞬間を見た瞬間
業界に足を踏み入れてから、よく世話になっていた調教師がいました。彼は面倒見も良いし、名伯楽の下でアシスタントを長年勤めた人間でもあるので、よく一緒に競馬場内を歩いていたのですが、ある時。。。
「◯◯、ちょっと話をしたいので、時間をもらえますか?」
と、彼の元で働いていた女性のエクササイズライダーが、声をかけてきました。確かに彼女は、彼の厩舎でよく調教つけていたのですが、ある時から彼女が乗る姿を見なくなりました。
「・・・・」
その調教師は、彼女が声をかけてきたにも関わらず、そのまま無視して調教に向かってしまいました。横にいた私が聞こえていたので、彼女の声掛けが聞こえていないわけではありません。
また、こんなこともありました。
私があるカメラマンに、馬の写真を撮影してもらいたいと依頼し、その調教師にも予め伝えていたのですが、撮影後、そのカメラマンから連絡があり、
「今回の仕事はやらせてもらったんだけど、今回分はお金くれなくていいから、ここの厩舎の仕事は今後頼まないでほしい」
と言われたのです。普段私が撮影するときは、快く応じてくれるのに、です。
AさんとBさんが仲良くて、BさんとCさんも仲がいい。でも、AさんとCさんは最悪という、人間関係の不思議な部分がありますが、まさしくこのカメラマンは、そういう類の案件だったのです。
重賞優勝馬でもない、一般の馬だったので、何回も依頼されて面倒、というわけでもありません。しかし、虫の居所が悪かったのか、一発アウトです。
この2件。いい人なのになぁ・・・と思いながら、見たくないところを見せられてしまった瞬間でしたが、やはり関係する人間へのリスペクトは、大事なポイントだなと考えさせられました。ダグの話を聞いて、思い出した次第です。
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もちろん一緒に仕事をしたくない人間もいる
とはいえ、我々は聖人君子ではない、一般の人間ですから、みんな、何人かは一緒に仕事をしたくない他人もいますよね。それはそれでいいと思います。
ただ、従業員として雇い入れる相手としては、やはり気持ちよく仕事ができる人が集まったほうが良い。もちろん、Cさんと相容れないAさんが生まれる可能性もありますが、そこをまとめ上げるのがマネジメントスキル。社長の腕の見せ所です。
懇意のホースマンも多数おりますので、もしこちらの関係者に聞いてみたいことがあれば、ご遠慮なくお問い合わせください。できる限りヒアリングしてみます(笑)