日本馬がロイヤルアスコットミーティングに参戦するのは、3年ぶりでしょうか?
前回が、長期遠征を敢行したディアドラのプリンスオブウェールズS。英国競馬に限っても、2020年のディアドラ出走が最後。

そんななか、今日(6/15)アスコット競馬場で、ロイヤルアスコット開催・プリンスオブウェールズSに出走したのが、皆様ご存知、昨年の日本ダービー馬・シャフリヤールでした。

ニューマーケットに滞在しての調整

ウォーレンヒルでの一葉

今回の滞在先は、競馬の聖地・ニューマーケット。

もはや、日本競馬界で知らない人はいないぐらいの知名度になった、ロジャー・ヴァリアン厩舎での滞在となったようです。
奥様は、ダーレーフライングスタート出身で、ゴドルフィンでも勤務されていた、花子ヴァリアンさん。私も、英国訪問時にお世話になったりしていますが、フランス・小林智先生と並んで、遠征時のサポートを依頼される、競馬界のキーパーソンだと思います。

 

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懇意のコエミのインスタグラムを埋め込ませてもらいましたが、この写真の一番右が花子さん。

素晴らしい厩舎を構えていて、調教オプションも数多く存在するニューマーケット。もちろん、腕利きの獣医師たちも多数いますので、馬にとっては最高の環境。
(人間にとってはちょっとキツめですが、短期滞在なら楽しいです笑)

ニューマーケットに居を構えるロジャー・花子さんたちがいることで、日本人スタッフも気分が楽に過ごせますし、天候にも恵まれたようなので、滞在の経過については文句なしだったのでは、と思います。

 

レースは思ったよりも苦しい展開に

まさかのロードノース出遅れ

これはかなり意外な展開・・・。開催国によって扱いが違ったりするのかなと思いつつ、まさかのロードノースが人為的なミスによって出遅れ。

まさかこの後にアレが起こるとは・・・

ゲートが開いた後も、ロードノースだけが出ない!

ゴソゴソやった後に、ようやく出るも、顔からメンコ・・・もとい覆面が外されていく様が、動画にしっかり記録されています。

あ、ゲートでない!そしてメンコが!
フランキーがメンコを捨てるシーンが・・・

さすがにこれは見たことがありません。覆面関係の問題だと、過去、日本でローブティサージュがゲート入りを嫌い、三浦皇成騎手が「メンコすれば入る」とリクエストしたにも関わらず受け入れられず、結局発走委員がムチを多用したことで、馬が入れ込み、レースが始まる前に終わったという件くらいしか、頭に浮かびません。

今、ツイッターでカナダの福元くんに聞いていますが、これはいったい誰の責任になるんでしょうか。

騎手?発走委員?厩務員?

どこでDecision Makeされたかによっても、かなり違うとは思いますが、個人的には興味があります。

結果、ロードノース敗退となったわけですが、実力馬にこれが起きてしまったことは、とても残念に思います。こういった点は、ドーピングとも違うので、発走委員が取る、馬を入れるアテンダントが取る、騎手が取る等、全世界的にルールと運用を決めてもよいのではと思います。

実力馬が引っ張った

勝ち馬のステートオブレスト、本当に強い馬ですね。

アイルランド産のスターズスパングルドバナー産駒。英・米・豪と3カ国で優勝。

Globetrotter State Of Rest adds to his haul after a Shane Crosse masterclass

2歳時は、スプリント〜マイル路線を進み、緒戦以外は勝てなかったものの、大崩れしない競馬だったようですが、3歳になって開眼。

カラの1マイルリステッド・セレブレーションステークスで3着の後、米国・サラトガ競馬場のG1・サラトガダービーで優勝。その2ヶ月半後には、オーストラリアで一流G1のコックスプレートを連勝。

 

競馬ゲームでは、2カ国・3カ国で勝つことはたやすいことですが、現実の競馬ではそうは行きません。
私が少し遊んでいた某ウイポでは、1000万円払うと、どこでもさらっと連れて行ってくれます。そして、強い馬なら、サラッと勝ってくれます笑

しかし、輸送は、怪我や疾病との戦いでもあり、箱に入ったからそのままビューっと飛んでくれるわけではありません。ましてや、現地到着後に食が細くなる馬もいますし、調整することですら、楽ではないのです。
ただ、米・豪ともに、ジョセフ・オブライエン調教師も預託を受けているクールモアの拠点があり、頼めばサポートも受けられたでしょうから、万全の体制でレースに臨んでいたことは、想像に難くありません。

これで、3カ国目のG1勝利。本年後半の活躍が非常に楽しみになりました。

シャフリヤールは頑張ったと思います。

端的に書きましたが、シャフリヤールは頑張ったと思います。

前述した通り、Varien Stableのサポートを受けて、馬に優しい土地柄のニューマーケットに滞在。遠征慣れしている陣営が、ここにきてミスを犯すことは考えづらく、水が合う合わないはあるでしょうが、おそらく良い状態でレースに臨めたと思います。

クリスチャン・デムーロ騎手は、直線に入ってバランスを崩したとのコメントでしたが、東京競馬場・メイダンと、しっかり整えられた競馬場とアップダウンの激しい競馬場とでは、求められる資質も違うので、流石に厳しかったのだろうと思います。

まだまだ先がある馬ですから、まずは帰国して、疲れを癒やしてほしいと思います。
(今思ったのですが、制限ギリギリいっぱいまで、涼しいドーヴィルとかに放牧しておいてもいい気がしますね😂)

やはり前哨戦・長期滞在は必要なのか

  • 経験豊富な藤原厩舎。
  • 馬は日本ダービー優勝、ジャパンカップはコントレイルの3着、ドバイシーマクラシック優勝。
  • 滞在先はロジャー・ヴァリアン厩舎。ニューマーケットの調教場。馬にとって最適の環境。
  • 鞍上は、欧州拠点のクリスチャン・デムーロ。

極力、不安材料が取り除かれた、勝率の高い遠征だったと思います。

こうなってくると、やはり欧州には長期滞在が必要なのでしょうか?前哨戦を戦ったほうがよいのでしょうか?
よく引き合いに出される、エルコンドルパサーの凱旋門賞挑戦は、いろいろ考えを巡らせても、ベストチョイスだったと思っています。
現地滞在、イスパーン賞2着、サンクルー大賞・フォワ賞優勝からの凱旋門賞2着。少なくとも、輸送技術もまだ向上していなかったその当時、考えられるベストな作戦だったのではないでしょうか?

永遠に結論が出ない問題を語るのは、時に不毛ではありますが、これについては、常に考え続けていかねばならないものであると思います。なぜなら、馬によって、調教師によって、環境によって、全てが違うからです。

個人的な知見からすると、やはり長期滞在の方が良いように思います。
がしかし、お金がかかる話でもあるのです。

(スタッフさんの生活費もありますし、スタッフさんが抜けた穴をカバーする、トレセンのスタッフさんたちの負担もあるわけです。ノーザンファームさんなら、牧場に数多くいるスタッフをサポートメンバーに送ることで、厩舎の負担も減るように思いますが、ノーザンさんも、無駄に人間を置いているわけではないでしょうから、これもまた、状況に応じてベターチョイスするしかない、正解のない問題であろうとは思います)

しかし、現地で時間をかければ、身体を現場の仕様に変えることは可能ですし、アップダウンのある馬場に対応する走法をマスターすることも可能であるはずです。

今回の経験が、今後の遠征に活かせれば、シャフリヤールの敗退もけっして無駄ではありません。
まずは無事に帰ってくることを願っています。