日本競馬にとっては新たな歴史となった

初の複数出走

2023年のケンタッキーダービーは、すったもんだの末、18頭の出走頭数で確定。最後は、大本命馬だったフォルテの当日出走取消というブレイキングニュースが届きました。

その中で、ご存知のように日本からは2頭の牡馬が出走するという、新たに歴史に1ページを加える結果となりました。

デルマソトガケ

UAEダービーを優勝することにより、一躍脚光を浴びることとなったデルマソトガケ。

松若風馬騎手を背に、全日本2歳優駿を優勝。その後、サウジダービーからUAEへ転戦し、新たにクリストフ・ルメール騎手を鞍上に迎え、その他の日本馬3頭ともに上位4位を独占、その頂点に立つに至りました。

マンダリンヒーロー

大井競馬所属のマンダリンヒーロー。どれだけの足跡を残したかは周知のとおりですが、大井競馬場とサンタアニタ競馬場の姉妹交流のプログラムにより出走が実現。枠については、ほぼ毎年フルゲート割れしているので、難しい問題ではなかったですが、往復1000万円を超える輸送費と、滞在費用の補助は非常に大きかったと思います。

投資対効果、という意味では、今回初めて大井競馬場がそのモトを取った、と言っても過言ではないチャレンジでした。大井競馬場の認知度が大きく広まったのは、間違いありません。

サンタアニタダービー当日は、私も競馬場にいましたが、普段は来ないメディア関係者もチラホラ見られたので、さすが日本メディア、という感じがしました。
木村くんの好騎乗により、ハナ差の2着。中間の調整からは、まさかまさかという結果で、木村くんも驚いていました。私も、やっぱり馬はよくわからない、という自戒に似た感覚を覚えました。

ケンタッキーダービーの魔力

人馬を狂わせる、ケンタッキーダービー

まず人間が狂う

遠征を二度経験して感じたことは、ケンタッキーダービーは、人間を狂わせます。

普段口出ししてこない、馬主が口を出し始める。

普段は冷静な、調教師の血の気が昇る(厩務員さんは意外と冷静)。

騎手も20頭の枠に収まりたく、血気盛んに営業活動をする(今回、私も自分の人脈で出走馬のどれか、どうにかならないかと、騎手から交渉依頼を受けたほどです)

冷静な判断ができる人間でも、冷静さを失い、もともと血の気が盛んな人間は、さらにアグレッシブになります。それだけ勝ちたいのが、ケンタッキーダービーです。

そして、馬も狂い始める

そんな周囲の人間たちに影響されて、馬も調子を狂わせ始めることがあります。

出遅れない馬が出遅れる、かからない馬がかかるようになる。調子を崩さなかった馬たちが、なぜかダービー前に調子を崩し始める。熱発する馬もいれば、跛行し始める馬もいる。

ちょっとした人間の感覚のズレや、欲により見えなくなった馬の状態。海外遠征ではなくても、普段のレースから、よくそういうことが起こるとは、調教師の方々に聞いたことがあります。

特に今回は、多くの出走回避馬が出たことにより、それが顕著になったような気がしてなりませんでした。

地方所属馬初の快挙 サンタアニタダービーを振り返る

勝ったのはメイジ!

勝ったのはメイジ。

道中は、出遅れたデルマソトガケと、後方待機策を取ったマンダリンヒーローの後ろにつけ、3コーナー手前から進出。後方追走馬たちを楽な手応えでかわして4コーナーを回り、直線ではじけて見事に優勝。前走のフロリダダービーでも、あわや勝ち切るかというところで、強豪・フォルテに差し切られて2着。今回は、そのフォルテが出走取消となりましたが、結果として、やはりフロリダダービー組が本番の勝利に決着しやすいことが顕著になりました。

米国遠征は難しいが、不可能ではない

もはや日本競馬にとって、お手軽遠征となった香港・ドバイと違い、特にアメリカは遠征が非常に難しいと感じます。現地への輸送時間も長い、現地でサポートしてくれる人間は少ない、現地馬からのあたりは厳しい。

香港は、主催者からのサポートがいたれりつくせり、時差も少なく、温暖な気候のため、人馬にとっては非常に良い環境。ドバイは、馬にとって必要なものは何でも揃えていけるので、日本と比較的近い環境を実現することができます(人間はお酒の制限があってしんどいかも)

ラヴズオンリーユーやマルシュロレーヌが勝った、2021年のブリーダーズカップは、その中でも比較的環境が整っている方で、飼料も一通り必要なものが揃ったのではないかと推察していますが、アメリカは、時差もキツめ、気候もまちまち(ケンタッキーダービーの時期は降雨もあり、まだまだ肌寒い。ブリーダーズカップも、開催地とタイミング次第で極寒です)。主催者から、物品関係のサポートは少ないですし、場所によっては、馬具や飼料を揃えるのが難しくなる場合もあります。

アメリカ、もとい米国3冠競走で実績を残すのは、並大抵のことではありませんが、強くなってきた日本馬。優秀な厩舎スタッフと米国での経験豊富な人間による適切なサポートがあれば、確実に着順を上にあげることができるでしょう。

米国遠征にご興味がおありの馬主様、調教師様、ぜひご遠慮なくお問い合わせください。