最近のアメリカは、毎年約2.7万頭前後の競走馬が生産されています。過去最盛期は、3万頭以上の頭数が生産されており、日本の最盛期の1.2万頭と比較しても、2.5倍以上の頭数。日本よりも馬産地の数が多いこともありますが、犬猫と同じように、アメリカの人間の歴史と生活の中に大きな位置を占めてきたのが馬でもあり、その意味では、根っからのホースマンたちが全米に多く存在することも、生産頭数が多い理由の一つでもあるだろう、と考えています。
そんななか、現在の日本競馬の流れを大きく変えたサンデーサイレンスを筆頭に、無数の名馬たちが生まれては消えていったわけですが、その中でも、私が勝手に「名馬」と思っている馬の列伝を書いていきたいと思います。
ミエスク – Miesque –
フランス調教馬ではありますが、生産国はアメリカ。20世紀のアメリカ名馬100選にも選ばれている名牝です。競走馬として勝ってきたレースは、ブリーダーズカップ(BC)マイル連覇、英仏1000ギニー、ジャックルマロワ賞連覇、ムーラン・ド・ロンシャン賞等、欧米の超一流G1を勝ち抜いてきた女傑です。
米国での活躍
BCマイルについては、古い映像から確認すると、あまり馬場も良くない中で中団待機。3〜4コーナーから進撃を開始し、直線では2着に3馬身差をつけての圧勝。ただ単に勝ったわけではなく、それぞれのレースで圧倒的なパフォーマンスを見せつけてきたわけです。ただ、彼女の場合は、現役時代の活躍だけでは終わりませんでした。
引退してからもすごかった!
引退し、米国・レーンズエンドファームで繁殖入りした後、産駒たちが大ブレイク。愛・英・仏で、イーストオブザムーンやミエスクズサン等が活躍しましたが、特にキングマンボの活躍は、欧州競馬及び日本競馬に、特に大きな影響を及ぼします。
ミスタープロスペクターを父に、名牝ミエスクを母に持ったキングマンボは、仏2000ギニー、セントジェームスパレスS等を優勝。欧州チャンピオンマイラーといっても過言ではない成績を収め、引退後は米・レーンズエンドファームへ。その後の活躍は言わずもがな、エルコンドルパサー(凱旋門賞はTVにかじりついて見てたのを、昨日のように思い出します!)やキングカメハメハをはじめ、後にエイシンフラッシュを生むキングズベスト、チャンピオンフィリーのディヴァインプロポーションズ等を輩出。日本に多大な影響を及ぼしているのです。
と、少し紐解くだけで、いかにミエスクが大きな力を日本競馬に与えているかが、よく分かると思います。直近の活躍馬では、ミエスク牝系の直系・ラヴズオンリーミーが産んだ、ドバイターフ優勝馬リアルスティール、BCフィリー&メアターフ優勝馬ラヴズオンリーユーが、大成功例。ラヴズオンリーミーは、未出走馬。血統背景をかわれて、ノーザンファームがキーンランド11月セールで、90万ドルで購入。私は完全な血統信者ではありませんが、ここまで枝葉の活躍を見せつけられると、ミエスク牝系の大きな力がはたらいていることを、感じざるをえません。
ダートが主体の米国競馬において、芝競馬に大きな足跡を残したミエスク。そして、その血を継承した日本競馬。なんとか、この牝系を脈々と受け継いでいってほしいと、切に願っています。